vol.8 「磁気消去」一瞬でデータを消去!手間いらず!

2013/04/19

今度は、データを消去するための方式の一つ、磁気消去について見ていきましょう。

データをHDDに記録するためには、HDD内のプラッタ表面に塗布されている磁性体の層(磁性層)に対して、スイングアームの先端に取り付けられた磁気ヘッドを利用してOと1の磁気パターンを書き込みます。書き込むとは、磁性層に存在するたくさんの磁石の方向をSN、NSの向きに変化させることです。

磁気消去では、この磁石の並びを強力な磁気を用いて一方向に変えてしまうという方式です。一般的には、強力な磁界を発生させるための専用装置の中にHDDを入れ、電力をチャージします。チャージし終えた段階で瞬間的に強磁場を発生させ、一瞬のうちに磁性体の並びを変えてしまい、データを消去することができるようになります。

この特性を活かすことで、例えばモータやヘッドが破損しているHDDで起動しないものであっても、プラッタ上のデータを完全に消去することが可能です。また、バックアップ用途に利用されている磁気テープやフロッピーディスクなど、データ消去の対象はHDDに限りません。もちろん、SCSIやIDEなどHDDとの接続インタフェースの種類やRAID構成などの有無に関わらず消去できるため、幅広い環境で利用することができます。

なお、最近では多くの情報を記録するために記録密度が高まっており、従来から利用されてきた水平(面内)磁気記録方式ではなく、磁性層の厚み方向に磁力線を通すことで記録密度を高める垂直磁気記録方式がHDDの主力となっています。垂直磁気記録方式では、水平磁気記録方式に比べて磁性層の中に細かく、そして強力に保存されていることから、データ消去を行う際の磁場もより強力なものを発生させる必要があります。

磁気消去を可能にする装置の違いとしては、発生可能な磁気の大きさや、消去メディアを収納できるサイズ、そしてHDDに対する磁気の照射方向などです。一般的には、PCのHDDだけを挿入する小型モデルが多く、その都度PCからHDDを抜き出す必要があり手間がかかるものです。しかし、製品の中にはノートPCサイズがそのまま装置内に収まるサイズの製品もあり、その場合は一気にデータ消去が可能になります。

また、磁気を照射する方向については、プラッタに対して水平(面内)方向に照射するものはもちろん、垂直方向や斜め方向から照射するものまで様々です。データを見る限り、水平方向で照射する場合はより強力な磁気が必要となり、斜め方向から磁気を照射するのがもっとも効率的にデータを消去することが可能とされています。

■磁気データ消去装置(製品名:MagWiperシリーズ)