vol.4 データ復旧時の障害の種類

2013/06/14

データが見つからなくなったり、パソコンが起動しなくなったりして、色々と調べ、どうしても自分ではどうする事も出来ないとの結論に達し、パソコンメーカのサポートセンターに電話すると、「それは、ハードディスクが故障しているようです。修理は可能ですけど、データは無くなります」と、冷たく宣言される。
データ自体は保証の範囲ではないのですが、等と言われて、「データ復旧業者」を紹介してもらい、或いはネットで検索して「データ復旧業者」に電話をすると、「それは物理障害なので・・・」なんだかよく分からない言葉が返ってくる。

物理障害って何だ?

障害の種類を簡単に説明すると、データ復旧業者が取り扱う中で一番多いのが「物理障害」、そして、データ復旧用のソフトでも復旧可能な事例の多い「論理障害」、それから、データ復旧業者自身の障害である「倫理障害」の3種類が存在します。

1. 物理障害とは?

バッドセクタ、リードエラー、ヘッドや基板等の媒体を構成する部品等が原因となって、書き込まれているデータの読み出しに何らかの問題が発生して、データが正しく読み出せないこと。

判定基準として以前からよく言われているのは、「BIOSで認識しない」なのですが、最近でもこう言われたのであれば、その業者のレベルに注意が必要です。従来、パソコンなどが起動する時に、まずBIOSが接続されているハードディスクやDVDドライブなどに、「あなた、だあれ?」と信号を送り、それを受け取った機器が「私は、何処其処のハードディスクで~す!」と、自分のIDを返事することで、BIOSが認識するという設定がされていると共に、そのIDは、回転するディスク上に記録されていて、それを読み出す事が出来ないと、当然IDをBIOSに返すことが出来なかったのです。

しかし、最近は、ノートパソコン等で、バッテリーで稼動可能な時間を延ばすために消費電流の節約を目的として、ディスク上ではなく、基板上のメモリーが、BIOSにIDを返す物も多く存在するのです。ですから、BIOSでハードディスクの型番認識をしても、物理的に障害が起きているためにスピンドルモータすら回転しないような場合もあるのです。

2. 論理障害とは?

媒体自体には異常が無いが、読み出したデータに何らかの障害が存在する場合。

区画構造情報(MBR)やファイル構造情報(FAT、MFTなど)や、データ・ファイルの構造的な障害に起因する障害のこと。一番多い例は、誤削除や、動作中に電源を強制的に切ってしまったために、ファイル構造情報などが正しく書き込まれず、実際のデータと一致しなくなってしまうなどのケースが多くなります。

これらは、一般的にデータ復旧ソフトを使う事で復旧が可能な物が多くなりますが、「データ復旧ソフトで復旧可能な物は全て論理障害である」という判定は間違いで、データ復旧業者との間で、「見解の相違」となりやすい問題です。

一番分かり易い例を挙げるのであれば、OSは起動できずとも、取り出したハードディスクを別のパソコンに接続すれば、簡単に必要なファイルのコピーが出来てしまい、OSが起動できない原因がバッドセクタやリードエラー、或いはクラッシュなどで、システムファイルを読み込み不能となってしまっているような場合となります。これは、調査を進めて原因を究明すれば、誰もが物理障害と認めるが、調査をしない、特に技術的知識の不足している人には、「論理障害としか判定が出来ない」ものとなってしまい、データ復旧業者が説明して納得を得るのに一番苦労を必要とする例であろうかと思います。

3. 倫理障害とは?

昔は存在しなかった障害であって、最近特に増加してきている障害内容です。

今から十年程前、まだデータ復旧サービスが一般的でなく、業者の数も少なかった頃は、「パソコンの使用上で、何か困った事があったらデータ復旧業者に電話した方が、パソコンメーカのサポート窓口に電話するよりも親切に、詳しく説明してくれる」と評判になったことすらありました。最近は、問い合わせの電話に対して、「どんなデータが入っていたのか?」などと、データの重要度を聞き出し、訳の分からない専門用語を並べ、「早くしないとデータがどんどん消える」、「うちの高い技術だから復旧が可能なので、他所では出来ない」、「いま、専用設備につないであるが、外してしまうと2度と復旧する事は出来ない」などと台詞を並べ、足元を見て高額な見積もり金額でデータ復旧の契約を迫る業者も出始めています。キャンセルを申し入れると、見積もり金額を半額にするなど、極端な値引きを提示したりする悪質な業者の存在を耳にするようになってきました。これらの悪質な業者の事を「倫理障害」と呼びます。