vol.6 論理障害とファイルシステム

2013/06/16

論理障害とはどのようなものなのでしょうか。データ復旧の対象となる電子記録媒体上の障害であることが前提条件であるとして定義すると、読み出したデータ上の障害であって、(ディスク)ファイルシステムの論理的な構造に適合しない状況が発生した(させた)状況と言えば良いのかも知れません。こう言えば、削除ファイルの復旧であっても、「ファイル構造情報から削除され、存在を否定されたデータ」=「論理的な構造に適合していない」と理解することが出来ます。

では、その論理的な構造はどのようになっているのでしょうか。

1.(ディスク)ファイルシステムとは?

おなじみのウィキペディア(Wikipedia)の「ファイルシステム」では、

「ディスクファイルシステム」は、直接的か間接的かに関わらずコンピュータシステムに接続された補助記憶装置、特にハードディスク上にファイルを格納するためのものである。ディスクファイルシステムとしては、FAT、NTFS、HFS、ext2、ext3、ext4、WAFL、ISO 9660、ODS-5、UDF、HPFS、JFS、UFS、VTOC、XFSなどがある。

と説明しています。さらに分かり易くするために、そのシステム独自の呼び名などを無視して乱暴に説明すると、HDDなどの電子記録媒体を、どの様に使っているかを、それぞれのOSの仕様に従った構造に構築したもので、Windows系での呼び名を用いると、MBRなどに代表される「区画構造情報」、FAT、MFTなどと呼ばれる「ファイル構造情報」と、実際に使用するデータを書き込む「ユーザ・データエリア」で構成されています。

2.「区画構造情報(MBR)」とは?

マスター・ブート・レコード(Master Boot Record)などと呼ばれ、電子記録媒体の先頭の部分に存在し、その電子記録媒体がどの様に使われているのか(パーティーションで、複数の論理ドライブに区分されているのか、その区分された容量がいくつで、フォーマット形式/ファイルシステムは何かなど)の詳細を記録しています。また、サーバなどで複数の物理的なHDDを、1台の論理的なHDDとして使用されるRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)構成のシステムとして使用されている場合には、各々の物理的HDDがどんな順序で使われているのかなどの構成を記録している情報も含みます。ですから、この情報を読み出すときに障害が発生すると、OSの起動が不可能になる、Dドライブなどの論理ドライブが消滅してしまう、フォーマットを要求されるなどの現象を引き起こします。

3.「ファイル構造情報(FAT、MFTなど)」とは?

電子記録媒体上に存在するデータ(ファイル)が、どんな名前で、何処(セクタ)に書き込まれているのかを記録している情報です。ですから、この情報を読み出すときに障害が発生すると、ファイルが消滅する、ファイルが開けないなどの現象を引き起こします。

例えば、ファイルの削除などの操作もこの情報を書き換えることで行われます。Windows系の場合のファイルの削除は、ファイル名の先頭の一文字を「削除済フラグ」に書き換えることで削除したことを表し、そのデータが書き込まれている部分を再度使う必要が発生したときに、その部分に新しいデータが上書きされてしまうまでは「データ復旧用ソフト」を用いる事によって、復旧することが可能になっているのです。しかし、UNIX系のファイルシステム(MacやLINUXも含む)においては、「削除済フラグ」を立てるのではなく、消去ファイルの構造情報部分を完全に消去してしまうので、Windows系の様な手軽な「消去からの復旧」は出来ない(出来なかった)のです。しかし、最近のEXT3などのファイルシステムの場合は、システム障害によって発生するファイルに対する障害を防止することを目的としたジャーナリングという、ファイル操作の記録を残す仕組みを採用するようになったので、「データ復旧ソフト」による消去ファイルの復旧が可能になりました。

このように、HDD等の電子記録媒体に記録されている情報には、使用されているそれぞれのOSによって規定された、論理的な構造が存在し、データを管理しているのです。