vol.2 バックアップの本質とは?

2013/03/12

では、バックアップとは一体何のために行うのでしょうか。本来バックアップとは、データの複製となるコピーを事前に作成しておき、ディスククラッシュやI/Oエラーなど万一の障害が発生した場合でも、複製したデータを用いて復旧できるように準備しておくことです。そうすることで、誤ってデータを消去してしまったり、残さなければいけない情報に別のデータを上書き保存してしまったりといった“ヒューマンエラー”にも対処できるようになります。

ここで重要なのは、バックアップの本質は単に複製を取ることが目的ではないということです。きちんと元の状態に復旧できる環境を整えておくことが本当の意味で重要なのです。なお、この復旧作業のことをバックアップに対してリストア(restore)と呼びます。バックアップとリストアは表裏一体となって考えておく必要があります。

もちろん、写真や動画、音楽ファイルなどの情報は、あまり復旧を意識する必要はありません。データそのものを外部のメディアに保管しておけば済む話です。しかし、メールシステムやWebサイトのようにサービスとして稼働しているシステムをバックアップしたい場合は、単にメール本文やWebサイト上のHTMLファイル、画像などを複製しておくだけでは不十分です。ハードウェア的な障害が原因であれば、サービスを再度動かすためのコンピュータそのものが必要ですし、コンピュータを動かすためにはシステム設定情報やネットワーク情報などの情報だって必要になります。これらの情報がそろって初めて、データを元に戻して障害以前の状況に復旧させることができるのです。

だからこそ、コンピュータの各種設定情報も含めてデータを複製しておき、障害発生時には事前に準備しておいた新たなハードウェアにコンピュータの設定情報を戻した上で、ファイルなどのデータを戻してあげる作業が必要です。これら全体がリストアと呼ばれる復旧作業にあたります。

ちなみに、バックアップした設定情報やファイルデータは、バックアップ対象となるコンピュータとは別の場所に保管しておくべきです。同じコンピュータ内の別のフォルダ領域に保管しても、ハードウェア障害が発生した場合にはすべてを失うことになります。また、災害などが起こってしまうとそのコンピュータのある地域一体がダメージを受けることも。だからこそ、コンピュータが設置されているところとは別の場所にデータを移しておくことがバックアップの基本となります。そのためには、USBメモリやDVD-R、磁気テープなど持ち運び可能な可搬性のあるメディアにデータを複製し、異なる場所にそのデータを保管しておきましょう。

もともと、地震をはじめとする自然災害が発生した場合に備えて遠隔地にバックアップデータを定期的に輸送しておくのが企業におけるバックアップの鉄則ですが、このような災害対策のことをディザスタリカバリ(Disaster Recovery)と呼びます。