vol.3 データ消去の方法

2013/04/13

では、データを完全にHDDから消去するためには、どんな方法が考えられるのでしょうか。大きく分けると、ソフトウェアを用いて別のデータで上書きする方法と、強力な電磁場を発生させてHDD内のデータを消去する磁気破壊、そして、分解や切断、穴あけなど物理的な方法でHDDが利用できないようにする物理破壊などが選択肢として考えられます。

まずは、もっとも多くの製品が市販されているソフトウェアによるデータ消去を見ていきます。ソフトウェアによるデータ消去は、ディスクの全領域に対してOOやFFなど固定パターンのデータを書き込むことにより、元データを意味のないデータで上書きしてしまう方法です。ソフトウェアによる上書きを行う方式には、NSA(米国国家安全保障局)方式やDoD5220.22-M(米国国防総省)方式などがありますが、上書きする回数の違いによってセキュリティレベルが異なってきます。また、データ消去後に完全にハードディスクのデータが消去されていることを確認するベリファイと呼ばれる処理の有無が方式ごとに異なる点もポイントです。この方式を採用すれば、安全にデータを消去したうえでHDD自体を再利用することが可能です。

アドバンスデザインの上書きデータ消去ソフト『DataSweeperシリーズ』

次に紹介するのが磁気消去です。磁気消去は、約10000ガウス以上の磁気をHDDに対して照射し、データを消去することが可能な手法です。通常HDDに情報を記録する(書き込む)ためには、磁気ヘッドから出る磁力線によって磁性層にある磁性粒子を磁化することでOと1に変化させます。つまり、磁性層に存在するたくさんの磁性粒子の方向をSN、NSの向きに変化させることで「0」「1」が書き込まれ、データとして保存することができるようになります。強力な磁気を照射する磁気消去では、磁性粒子の並びを一定にすることでデータを消去します。

アドバンスデザインの磁気データ消去装置『MagWiperシリーズ』

最終的な手段としては、いたってシンプルな物理破壊という方法です。情報が記録されたHDDそのものに穴を空けたり大なシュレッターで裁断したりなど、物理的に情報が読み出せない状態にする方法です。HDDを再利用することは当然できません。

なお、リース契約などの場合は再利用できる状態にしておくのが前提となるため、HDDが再利用可能なソフトウェアによる上書き消去が前提となります。