vol.4 3方式のメリットデメリット

2013/04/14

前回取り上げたデータ消去に関する「上書き消去」「磁気消去」「物理破壊」の3方式について、それぞれメリット及びデメリットを見ていきましょう。

ソフトウェアによる上書き消去の場合、最大のメリットとなるのがHDDの再利用が可能な点です。データを上書きした後でも別の用途にHDDが活用できるため、投資保護に繋がります。また、その場でデータ消去が可能となるため、メディアを別の場所に移送する際の盗難リスクもなく、ソフトウェアで手軽に処理することが可能です。

ただし、プラッタが破損していたり書き込みできない状態になっていたりする場合は利用できません。また、製品によっては秘密領域上にアクセスできないものもあり、完全なデータ消去には至らないケースがあることを念頭に置いておきましょう。

磁気消去については、HDD上のデータを一気に消去することが可能となり、工程自体がシンプルで手間なく一瞬でデータ消去できる点が大きなメリットです。以前はHDDを個別に取り外す必要がありましたが、大型の磁気消去装置を使えば、PCなどはそのまま装置内に入れて強力な磁気を照射することで、簡単にデータ消去できます。

ただし、HDDの再利用はできないため、廃棄することが前提となります。また、ドライブ以外の構成機器も損傷を受けることがあり、消去できたかどうかの確認が難しい場面もあります。なお、最近のHDDは磁気に対してしっかりと遮蔽された構造のものが増えているため、より強力な磁界が必要になることも覚えておきたいところです。

物理破壊は、正しい方法で非常に細かく破壊することができれば、データを完全に破壊できるため、セキュリティ的にはもっとも安全な方法です。多くのコンピュータを一気にデータ消去したい場合、大量のHDDを同時に破壊することが可能となるため、作業効率は高い方法と言えます。

デメリットは、磁気破壊同様にHDDが再利用できず、破壊した後の細かなゴミが大量に散乱する点です。このゴミの処理も含めた工程を念頭にデータ消去を検討する必要があります。また、プラッタに対して穴を空ける製品を用いた場合、穴の空いていないところのプラッタには情報が残っています。最近の高密度化が進んだHDDでは少しでもプラッタを残した場合、空いた穴を埋めて表面を整えることで、プラッタの一部から大量のデータを復旧できる可能性もあるため、完全に破壊をするのであればシュレッターなどでHDD全体を裁断するなどの方法が確実です。