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HDDの構造

メディア解説:ハードディスク:HDDの構造

HDDは、アルミニウムダイキャスト製の基台に組みつけられた、スピンドルモータによって回転する、表面に磁気材料皮膜を持った磁気ディスク(プラッタ)に書き込まれている情報を、位置決め用アクチュエータで位置制御される磁気ヘッドで読み出し、その信号を専用の電子回路を搭載しているプリント基板上で処理し、接続I/F(インターフェイス)を介してホストコンピュータに出力する。プリント基板以外は、超精密機械であるため、カバーと基台とで構成される筐体によって作られる閉鎖空間に、防塵を目的として閉じ込めている。

各部品の役目と特徴

①基台
スピンドルモータ、磁気ヘッド、位置決め用アクチュエータ等全ての部品を搭載・固定する基礎であると共に、HDDをコンピュータに取り付けるための固定用部材の役目を持っている。このため、取り付け時にコンピュータ側の材料・寸法精度などの影響によって、捻る、引っ張る等の力が加わることがあるので、それら外力が内部の各部品の取り付け位置関係に影響を与えないように、堅牢であることが求められている。
②スピンドルモータ
記録用の磁気ディスク(プラッタ)を回転の中心軸を一定に定めた上で、回転ムラの少ない一定の速度で、上下方向の振れも無い様に継続的に回転させることが求められているので、最近は軸受け部分にボールベアリングよりも振動の少ない、動圧流体軸受けが主に用いられている。
③磁気ディスク(プラッタ)
アルミまたはガラスの極限まで平坦な円盤の表面に、データ記録用の磁性体の皮膜を真空蒸着などで形成し、その表面の保護用に硬度が高く摩擦係数の非常に小さいDLC(Diamond‐Like Carbon)層設け、更にその上にフッ素系オイルによる潤滑層を形成して、磁気ヘッドとの摩擦による損傷を保護している。
  • (参考1.)HDD以外でDLCを使用している代表的な例は、日産のGT-R等のような高級スポーツカーのエンジンで、シリンダーの内壁やピストンリングが上げることができる。高性能化のために無視することの出来ないエンジン内部の摩擦によるエネルギーロスを低減し、過酷な使用に耐えるように表面にDLCをコーティングして、高性能化を図っている。
  • (参考2.)フッ素系オイルは、本来宇宙空間で使用する機械部品の潤滑用に開発されたもので、真空中でも蒸発せず、表面張力が小さいという特徴があるので、長期間にわたり安定した状態を保つことが出来ると共に、ヘッドとプラッタが張り付いてブレーキとなり、回転を妨げる“ヘッド吸着現象”が発生しにくいのである。
④位置決め用アクチュエータ
高速なデータアクセスを実現するため、VCM(ボイスコイルモータ)と呼ばれるコイルと、強力な希土類(ネオジム)磁石を利用し、磁気ヘッドの読み出す、プラッタに書き込まれているトラック位置情報を利用して、ナノメータ台の精密・微小なトラックをヘッドが正確に追従するように、ボールベアリングを利用した軸受と、磁気ヘッドを支えるヘッドアームとサスペンションで構成されるヘッドアームアッセンブリの駆動、位置制御を行う。
⑤磁気ヘッド
HDDの初期は、コイルと磁性体のコアによる巻線構造であり、読み書き兼用の一つの磁気回路だけで構成されていたが、最近は、最新のICと同等のナノメートル台の寸法精度で真空蒸着技術によって作成され、書き込み用の薄膜コイルによる書き込み専用の磁気回路と、半導体のTMR(トンネル効果・磁気-抵抗変化)素子を利用した読み取り専用の磁気回路を別々に持ち、読み取り側の幅を書き込み側より狭くすることで、ヘッド位置制御誤差に対するマージンを増している。
⑥プリント基板
Web上では“基盤”と表示しているのを良く目にするが、基盤は基礎の意味であって、基板は電気部品を載せる板であり、大きな間違いである。英語では、Printed Circuit Board(PCB)または、Printed Wiring Board(PWB)であり、プリント回路基板の意味。スピンドルモータや位置決め用アクチュエータの制御、磁気ヘッドによる書き込み信号や読み出した信号の増幅、D-A/A-D変換、ホストコンピュータとの信号の交換など、物理構造以外のHDDの全ての管理・制御機能を持っている。最近のHDDのプラッタとヘッドはその品質によってランク分けして組み合わせ、その組み合わせに最適な条件を、基板上のメモリーとプラッタのシステム領域に書き込まれている“ファーム”で管理している。そのために仮に同一メーカの同一型番であっても、“ファーム”が一致しない場合は、部品を含めて互換性が無く、基板を交換しても動作することは保証されず、更に致命的な障害を起こすこともある。
⑦接続I/F(インターフェイス)
HDDがパソコンに使われ始めた初期には、ST-506、SASIなどが使われていたが、1959年にATA(PATA/IDE)が規格化されたのに従い、サーバ等の高級機用のSCSI(Small Computer System Interface)、パソコン用のATA/IDEと呼ばれるパラレルケーブルを使用する方式が数年前まで中心に使用されていたが、最近ではより高速なSATA(Serial ATA)、SAS(Serial Attached SCSI)が主流になっている。また、パソコンに外部接続する“外付けHDD”に於いては、SCSIから、USB(Universal Serial Bus)に変わっている。
外付けHDDを製造している企業がHDDメーカであるかのように誤解しているのを見掛けることがあるが、現時点でHDDメーカは、資本ではSeagate、WD、東芝の3社、ブランドでは、それにHGST(資本は100%WD)を加えた4社で、年間合計約6億台を製造している。外付けHDDは、そのHDD本体が、専用のインターフェイス変換用の回路基板と共に、ケースに収められて売られているだけなのだ。