HDDの障害

メディア解説:ハードディスク:HDDの障害

HDDは、パソコンの中で最も障害の多く発生する部品です。アメリカのデータ復旧会社が2011年に発表した調査結果では、パソコンでデータの消失を経験した人のうちHDDでの経験者が約95%という絶対的な割合を占めています。そして、その中の約40%がハードウェアの故障です。そして、データ復旧会社に持ち込まれるHDDの障害の原因の中で一番多いのが、リードエラーで約半数を占め、2番目と3番目が、ヘッド故障とファームウェアやシステムエリアに書かれている情報に関わる障害で、約15%~20%程度。この3件の合計で80%を超えてしまう状態です。

1.リードエラー

リードエラーとは、文字通りHDDがデータを読み出そうとした時に読み出せないことと同時に、データ復旧業者の手にかかれば、部品交換などの物理的な手段を用いる事無く、専用の設備や装置を使用することで、データの回収が可能であったことも意味しています。また、CRCエラーもリードエラーの中に含まれます。
HDDにリードエラーはつき物であって、実際には何時起こっても不思議は無く、それが認識されないのは、HDDの機能として自動的に働く、リードリトライ機能によって顕在化が予防されているためです。また、HDDに於けるCRCエラーは、セクタ内の“Sync領域”に書かれている“CRCデータ”が正しく読み出せないことを表すエラーなので、広くは読み出しエラーの範疇であり、これらリードエラーの主な原因は、①HDDの設置されている姿勢、温度、振動、衝撃などの使用環境の影響、②HDDに使用されている部品の経時変化、です。このように部品の交換の必要の無い“リードエラー”ですが、読み出したデータに論理的な損傷のある「論理障害」ではなく、データを読み出すことに問題がある「物理障害」であることが理解できるでしょうか。

2.ヘッド故障

ヘッドの故障によるHDDの症状の代表的なものは、電源ON直後の起動時に、“カコン、カコン”などの異音を発生するものです。これは、HDDの電源ONによって開始される起動シーケンスの中で、HDDのシステムエリア(サービスエリアとも呼ぶ)上のデータを読みに行った時に、プラッタ上のトラック位置を示すサーボデータも読み出すことが出来ず、ヘッドの位置を制御することが出来ずに暴走し、ヘッドの破損防止のために用意されているストッパにヘッドが衝突している音なのです。
ヘッドの故障原因として一番多いのは、プラッタとの接触によるヘッドクラッシュが挙げられます。ヘッドクラッシュというと、プラッタの傷を思い浮かべると思いますが、実はヘッドの方がダメージを受けやすいことは、あまり知られていないようです。簡単に説明すると、昔のレコードとレコード針の関係なのですが、ダイヤモンドで作られている硬いレコード針が、塩化ビニール製の柔らかいレコード盤と接触して振動を拾っているのに、磨耗するのは、ダイヤモンドのレコード針であって、ダイヤモンドを構成している炭素(結晶)がレコード盤との摩擦熱で、酸素と化合(高温による酸化)して二酸化炭素(炭酸ガス)となる昇華現象によるものです。このように、回転している円盤と接触して損傷を受け易いのは、レコード盤やプラッタではなく、相対的に熱容量の小さいレコード針やヘッドの方なのです。

3.ファームウェア障害

ファームウェア障害の原因はよく分からないことが多いのですが、症状としては、①ヘッド故障のようにヘッドがストッパに衝突して異音を発生する。②モータの回転音がしてヘッドは動くが、BIOSで認識されない。③HDDが起動停止を繰り返す、などがあります。これらは、電源ONによる起動シーケンスの中で、基板上のメモリからファームを読み込み、プラッタのシステムエリアに書かれているデータを読み、そのデータと実態の状況の確認作業中に障害(不一致)の存在が検出されたことによるものです。

4.ヘッドクラッシュ(プラッタ表面損傷)

HDDの故障と言うと“クラッシュ”と言われる位代表的な障害ですが、既に説明したように、実はヘッドの方が損傷を受け易く、プラッタは比較的損傷を受けにくいのです。クラッシュの始まりは、とても目視で確認できるような物ではありません。現在のHDDのヘッドとプラッタの隙間(浮上量)は、約2ナノメートルで、1ミクロンの1/500しかありませんし、データの書き込まれているトラック幅は約50ナノメートルで、1ミクロンの1/20しかありません。ですから、目で見えるような傷は、既に複数のトラックに及ぶ大きな傷になってしまった後の姿なのです。そして、クラッシュによる障害は、ヘッド障害の発生率よりはるかに低いのです。この理由は、プラッタが回転し、それによって起こされる気流によって浮いているヘッドは、プラッタとヘッドの間の気流がクッションの役目をするので、浮上量が微小であっても、運転中は簡単には衝突事故を起こしにくいことにあります。そして、運悪く衝突事故を起こしても、傷つくのはヘッドの方であることが多く、プラッタに傷は付き難いのです。実際のクラッシュは、始めの衝突で発生した破片などがが、運悪くヘッドとプラッタの間に挟まって、その鋭角な角がプラッタを引っ掻くことで大きくなったことが多いのが本当の姿です。